ネヘミヤ記9章8節について その1

 

新改訳聖書』第3版のネヘミヤ記9章8節に、次のように書かれています。

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9章8節
あなたは、彼の心が御前に真実であるのを見て、カナン人、ヘテ人、エモリ人、ペリジ人、エブス人、ギルガシ人の地を、彼と彼の子孫に与えるとの契約を彼と結び、あなたの約束を果たされました。あなたは正しい方だからです。

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3行目から、「・・・あなたの約束を果たされました。・・・」とあります。

 

この中の「果たされました」に当たる原語は、ビブリア・ヘブイカ・シュツットガルテンシア(以下、BHSとします)では、多少読み方は違うかもしれませんが、「タケム」となっています。

 

「タケム」には、わたしが持っている辞典には、「to fulfil,perform」(意味は「果たす」など)という意味があります。したがって、「果たされました」と訳すことができ、あるいは「成就されました」と訳すことができると思います。

 

しかし、2行目からの「・・・彼と彼の子孫に与える・・・」の「彼・・・に与える」に当たる言葉が、見当たらないのです。したがって、BHSの原文からは、カナンの地がアブラハム与えられたかどうかは分からない、ということになります。

 

「彼の子孫に与える」というだけであれば、「果たされました」と言うことができる、と『考えられなくもない』と思います。しかし、この「子孫」も「単数」なのです。したがって、この「子孫」は、ガラテヤ人への手紙3章16節の記述より、「キリスト」ではないか、と考えることができるのです。

 

「果たされました」に当たる「タケム」は、「未完了形」ですが、「タケム」に「ヴァヴ」がくっついているので、「ヴァヴ継続法」または「ヴァヴ倒置法」になっている、と言うことができます。「ヴァヴ継続法」または「ヴァヴ倒置法」というのは、簡単に言うと、「未完了形」ではあるが、その前で用いられていた「完了形」を継続し、「完了形」として扱われる、というものです。

 

「未完了形」なので、通常は「果たされるでしょう」というような訳になるのですが、「完了形」が継続されるので、「果たされました」とすることができるのです。

 

「彼の子孫」の「子孫」が、仮に「キリスト」だとすると、「果たされました」という「完了形」は、「未来の領域の完了形である」可能性が出てきます。この「完了形」が、「未来の領域の完了形である」とすると、今はまだ「果たされていない」が、未来のあるときに「果たされた」、と考えることができるのです。

 

つまり、BHSの原文で考えると、ネヘミヤ記9章8節に書かれていることから、どちらかに『確定』することはできない、すなわち、カナンの地がアブラハムの時代に、アブラハムに与えられたと『確定』することはできませんし、そのほかの領域の完了形の可能性もあるので、「未来の領域の完了形である」と『確定』することもできない、と言えると思います。