アブラハムについて その2
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以前に“ケカリスタイ”という言葉について①から③の3つの意味があると書かれています。その①には、恩恵的に与える,と書かれています。
訳すときに①を選べば“恵み深く与えられた”となると思いますが?
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確かに、①を選ぶことは可能でないわけではありません。しかし、「恩恵的に与える」という訳語を選んだ場合、「何を」恩恵的に与えるのか、が分からないのです。
『回復訳聖書』の日本語訳は、「・・・その嗣業を・・・恵み深く与えられた・・・」となっています。この訳語だと、「その嗣業」が「・・・与えられた」と理解されてしまいます。
しかし、ネストレ・アーラントの原文には、「その嗣業を」に当たる「対格」が無いのです。「対格」というのは、基本的に、「~を」を表わす「格」です。ちなみに、これに対して「与格」というのがあるのですが、こちらは基本的に、「~に」を表わす「格」です。
「その嗣業を」に当たる「対格」、もしくは、「その嗣業」に当たる「対格」の代名詞があれば、①を選ぶことも可能ですが、それが無いので、①を選ぶことは、厳しいと思います。
いかがでしょうか。